信州の鎌倉といわれる塩田平の一角の寺めぐり 2007/5/18

行程(日帰り)
別所温泉駅から、常楽寺、安楽寺を廻り、「柏屋別荘」で入浴・昼食をした後、シャトルバスで、中禅寺に出て、塩野神社、龍光院、あじさいの小道を通って、前山寺、ここで無言館へは時間がなくなったのでシャトルバスで塩田平へ出て帰路に着く。



別所温泉駅から常楽寺に向かおうとした角にあった地蔵尊。そこを曲がって常楽寺へ向かう道。

更にその先にあった小さな仁王堂、覘くと中に仁王様。‥途中にあった道祖神。


常楽寺じょうらくじ
北向観音の本坊となっている天台宗の古刹。別所三楽寺の一つで、天長年間(824〜834)、円仁慈覚[えんにんじかく]大師によって開かれ、その後塩田北条氏や海野[うんの]氏が建て直した。安楽寺の開山、樵谷惟仙[しょうこくいせん]が16歳まで仏教を学んだ寺でもある。
常楽寺本堂の裏山の杉木立の中に立つ高さ3m近い石造多宝塔がある。その昔、大きな火柱とともに本尊の観音様が現れた、という言い伝えがある。軸石四面に刻まれた銘文には、1262年(弘長2)に塔を建立し、一切経を納めたとある。
美術館を併設しており、古瓦をはじめ、徳川家康が71歳の時に日課として書いたという『日課念仏』(重要美術品)、葛飾北斎の絵馬『劉備檀渓渡河図[]』、国の重要美術品『三浦屋店頭図』、乙女観音ともよばれる『聖観音立像』、棟方志功など 。
松は立派なものが多く、牡丹苑もあった

二段目左の写真の松は、確か「御舟ノ松」とかいう。
樹齢300年、10×8×6m。
中央の幹と大きく枝が左右に張り出して地を這って舟形を造る老松。こちらも同じ松の写真→





←徳川家康が71歳の時に日課として書いたという。
『日課念仏』(重要美術品)

安楽寺あんらくじ
常楽寺、長楽寺(現存しない)と共に、別所三楽寺と称されていた古刹。天長年間(824〜834)に開かれ、鎌倉時代に再興されたという歴史ある禅寺。鎌倉時代には鎌倉の建長寺と並ぶ格式が与えられ、北条氏の保護もあって、信州の仏教の中心地となっているという意味の記事が書物に残っている。本堂近くの伝芳堂(開山堂)に安置されている開山・樵谷惟仙[しょうこくいせん]和尚坐像(重要文化財)と、二世・幼牛恵仁[ようぎゅうえにん]和尚坐像(重要文化財)は、玉眼でまるで生きているかのように威厳がある。ともに1329年(嘉暦4)造。
八角三重塔はっかくさんじゅうのとう(国宝)
安楽寺の背後の山腹にあるこの塔は、鎌倉末期に北条氏によって建立されたもの。現在、日本に残るただ一つの八角の塔。建築は中国から伝わった禅宗様建築で、外側から一見すると四重に見えるが、一番下の屋根は「裳階」[もこし]とよばれるひさしのようなもので、縁やてすりがどこにもない、などの特徴がある。わが国最古の禅宗様建築。塔の内部は内陣とよばれ、大日如来像が安置されている。
杖を貸してくれるので、どれほど登るのかと思いきやすぐ上であった。歌碑が二つほど。

  窪田空穂歌碑


   老いの眼に
     観る日のありぬ
           別所なる
          唐風八角三重塔


「臨泉楼 柏屋別荘」
別所温泉街で最も奥の静かな場所、真田幸村ゆかりの石湯の隣りにある明治43年創業の老舗旅館。木造4階建て本館ほか離れ4棟がツツジ庭を取り囲むように建ち、樹齢九十五年、四十三種、二千六百株のつつじが見られる。なかなかに趣のある旅館であった。有島武郎が滞在して「信濃日記」を書き上げ、川端康成も「花のワルツ」をこの宿で執筆。ほかにも、池波正太郎や斉藤茂吉、船橋聖一、北原白秋、西条八十など著名人が逗留しており、1999年に上田市景観賞受賞、日本経済経新聞選定の日本百名湯のひとつ「別所温泉」の宿としても紹介されている。
浴場は畳敷きだった。「雅膳」というのをいただく。

塩田平ウォーキング
別所温泉街から上田交通別所線の塩田町駅までを結ぶ約10kmのコースをいうよう。ウォーキングコースにほぼ平行して、みどころ間を結ぶシャトルバスが運行されている。このバスで中禅寺に向かう。
地図は上田市観光課の「塩田平ウォーキングマップ」から借用。


  前山寺の前から見た塩田平


中禅寺ちゅうぜんじ
独鈷[とっこ]山の麓、標高600m。空海によって開山されたと伝わるこの地方で最も古い寺。独鈷山への信仰から創建されたと伝えられる。茅葺き屋根の中禅寺薬師堂(重要文化財)は、鎌倉時代初期に建てられた歴史ある建築物。堂内には、薬師如来座像(重要文化財)と手なし神将像が安置されている。薬師如来座像は鎌倉初期の作と伝えられ、穏やかで整った優美な仏像。
入り口のところにあるお休み所で蕎麦茶と小鉢に五種類ほどの漬物が出された。その中のピリカラ味の「青唐辛子味噌」がおいしくて購った。

塩野神社しおのじんじゃ
延喜元年(901)に成立した歴史書『日本三代実録』にも名前が出てくる由緒ある神社。武田信玄がこの塩野神社に朱印状(上田市指定文化財)を奉って武運長久を祈ったという。杉林の中に立つ拝殿は江戸時代に建立されたもので、2階建ての楼門造。拝殿の前にかかっている橋は、太鼓の一部のような曲線を帯びているため「太鼓橋」の名が付いている。

龍光院りゅうこういん
塩田北条氏の菩提寺で、1282年(弘安5)塩田城主だった北条国時[ほうじょうくにとき]が開基した。参道の横、塩田平を一望する場所にある無銘の墓「お開基様」は北条義政のものとも、国時のものともいわれている。山菜料理も食べられる。藤棚が立派。屋根の像が珍しい。


あじさいの小道を通って、更にこんな道を越えて、前山寺へ向かう。

前山寺ぜんさんじ
弘法大師が修行霊場として開いた古刹。塩田平散策コースの中程にあり、立ち寄る人も多い。重要文化財の三重の塔は、縁[えん]や匂欄[こうらん](手すり)などが付いていないため未完成と考えられているが、その姿がすっきりとして美しいことから「未完成の完成塔」と呼ばれ親しまれている。和様と唐様の折衷様式。
藤の名所でもある。牡丹も躑躅も綺麗だった。

無言館には行きそびれた。