桜物語 京都桜紀行 2006/4/9〜12


  



  「桜物語」京都旅行記 
     
四月九日
  京都の桜が見頃になりつつあると聞いて、六日に青春一八切符で出掛けようとしたら、期間は十日までだったものの発売は三月一杯で終了しているとのこと。 もう一度考え直すことにしていたら、空模様がどうもおかしい。この雨をやり過ごすと、花が散ってしまうかと、九日夜の高速バスで出掛けることにし、計画を作り直した。
バスは、青春ドリーム号、帰りは、ぷらっとこだま、宿は、三条京阪に六割引きで二泊とると、十八切符で作った計画の予算【三万円】で何とかなりそうになった。

 八重洲に行ってみると、夜行バスは、どのバスも混み合っている。夜行バスの利用は若い人が少なくなったと感じていたが、実際はそうでもない。相変わらず外人が多い。ウイスキーと水を買って乗る。

   朧月蟻の如くにバス連ぬ

 隣席は女子大生か「自己PR」用紙の下書きを、迷い迷い書いている。ラフな服装からして、新入社員とも思えない。
 やがて彼女は、携帯を開いたまま眠りについた。

   携帯を抱いて寝ている春の旅

   春眠の夢切れ切れの夜行バス

四月十日
 京都駅には、予定より早く六時半前に着く。まだ地下街はシャッターを下ろしたまま。駅の地下の喫茶店が七時開店とあるので、待つ。
   
   花曇る早朝の駅戸を鎖し

   開店待つ人の列あり花霞

 トーストの朝食の後、地下鉄一日フリーチケットを買い、醍醐に向かう。この日の交通手段はこの一枚で計画する。
 

 醍醐寺
  醍醐駅周辺は再開発されている住宅地。醍醐寺までの十数分の道の半ばは公園のように整備されている。


上醍醐に向かおうと、女人堂を過ぎて、十分ほど登ると大汗をかいた。太閤の「醍醐の花見蹟」は聞いていた通り全く見通しがない。ちらっとは偲べる景がのぞけるかとも思ったのだが…
地元の人に聞くと、上醍醐は桜はまだだという。雨も降りそうなので、途中から引き返す。
・女人堂上下 醍醐寺総門(上)・桜馬場(下)
 
地下鉄で山科に戻り、毘沙門堂に向かう。その途中の琵琶湖疏水と瑞光院。



下の「瑞光院」は、
浅野内匠頭長矩の夫人瑤泉院と深い縁故の寺。長矩公の切腹の後、供養塔が建てられ、大石ら切腹の後、当時の住職が江戸に下り、四十七士の遺髪をもらい受け寺内に葬るという。 もとは紫野の地にあったが、昭和三四年、大石遺愛の梅の古木ともども、現在のここ山科の地に移転している。
疏水(山科駅から10分の諸羽神社上の公園から続く・上は安朱橋)
 
 毘沙門堂    


紅葉と桜の名所で堂前の樹齢約百五十年の大枝垂れ桜「般若桜」は四月十日頃に見事な花を付け、紅葉は十一月半ば頃に弁天堂、十一月下旬頃は参道と二回見物が楽しめるということだった。
毘沙門堂へは,桜の時期に山科疏水とセットで訪れるのがやはりお勧めである。

  琵琶湖疏水
   疏水を下り、陵駅まで歩いた。


  河原町三条
昼食に河原町に出ようと、「京都市役所前」へ戻る。
高瀬川の畔の桜は満開を過ぎ、川面には途切れることなく一面花弁が流れ続けている。







高瀬川
              
 三条通を歩いていたら、こんな看板を見つけた。洒落た文句に惹かれて、細い石畳の露地を入った。外の賑わいから離れ、明治大正の粋人が好んだ静かなたたずまいが其処にはあった。由緒ある旅館だったところが一年前焼き肉屋としてオープンしたという。店の人が庭を案内してくれ、携帯で撮った四季の写真を見せてくれた。

  本能寺
     

  国際会館前


雨になってしまったので、宿に入ってしまおうかとも思ったが、時間も余っている。拝観料の要らない屋根のあるところで桜は見えないかと、地図とにらめっこ。宝ヶ池に長い渡の通路があったことを思い出す。桜もあったような気もする。で、出掛けたが、地下鉄を降り地上に出てみると、やはり雨はひどくなっていた。

  宿・夕食 
 宿は京阪三条にあり、出掛けるにはなかなかに都合がよい。風呂に入ってから、橋向こうの河原町に出掛けた。昼を摂った近くでやはり露地奥のカツ屋にはいる。キャベツのソース(たれ)がおいしく食がすすんだ。いい気分になったところで、夜桜を見に「府立植物園」に出掛ける。

  夜桜・「府立植物園」


四月十一日
 一日雨の予報。豪雨になるかも知れないというので、遠くに行くのは見合わせる。タクシイで帰るにしても、ワンメーター位の処というつもりで、徒歩で出掛ける。

  祇園
        


  建仁寺
 この建仁寺は静かだった。塀に沿った桜が散り続け、部屋の中からは桜は見えないが、その花弁が時折舞ってくる。
中学生のグループに花弁を拾って回ってみなさいと言ったが、実はその中には造花が廊下に貼ってあるという寺の演出があったりする。私と同じような年配の桜巡りをしている人と寺のサービスのお茶を飲みながら話をした。畳に座り込んでいる私をモデルに外人が写真を撮って行ったりもした。

  花びらのひとつ舞ひ来る寺の縁

  舞来たる白洲の花を数へけり

  囀りと雨音を聞く春の寺


  六道珍皇寺
 建仁寺から清水に向かう途中にこの六道珍皇寺がある。特に見るお寺ではないが小野篁に縁ある寺で「杉篁庵」の名にも縁があるかと立ち寄る。




このあたりは中世以降「六道の辻」と呼ばれ、他界への入り口とされていた。
下の写真ではよく見えないが、実は写真中央あたり(赤い祠の右手前)に井戸がある。この井戸から小野篁が冥界に通ったといわれ、現世と冥界の境に建つ寺という。


  清水寺・地主神社
 さすがに清水は人がいっぱい。人混みの中を歩くことになった。地主神社に行くにはここを通るしかない。
地主神社の恋占いの石の脇の地主桜
   清水も桜に霞み暮れなずむ


  高台寺圓徳院
 三年坂で食事をして、八坂の塔を見ながら、ねねの道を通り高台寺に向かった。こちらも人が多い。
 ここでは人としゃべっていたからか写真がない。

  


 ねねの道

 
包むが如く

  
桜降る 


  円山公園


  知恩院


  平安神宮


 夜桜祇園巽橋と円山公園の「祇園枝垂れ桜」

  


 灯燈る

 
祇園の雨や

  
 桜濡る 
 円山公園に着くと雨がひどくなったので、雨宿りのつもりで「枝垂れ」の前の「開花亭」に入る。結局そこで夕食にした。小降りになって四条河原町、夕食の予定だった先斗町を巡って帰る。


四月十二日
 宿の隣のコンビニで「市バス一日乗車券」を求めて出発。

  上賀茂神社
賀茂川堤
   入れ替わりカメラ構える王桜

 観光客の多いところばかり回っていると疲れるので、山の麓の田舎道を歩くことにし、修学院方面に向かう。迷った末、「曼殊院」に桜があったか案内書にも書いてないし記憶にもないが、兎に角歩くことにした。

  曼殊院
曼殊院入り口の桜の遠景
観光客は数えるほど、縁に座っていると、人声も聞こえなくなったりする。
   神々の染めし山裾花の宴

   
  鷺森神社
 紅葉の名所だが、枝垂れも一本あった。
   山路深く一本の桜鎮もるる


  銀閣寺道・哲学の道


  京都御苑


 写真とる
  人の笑顔や
     御所桜



 入れ替わり
   カメラ構ゆる
        糸桜

桃林
御苑を歩いて、今回の桜巡りをおえる。
桜に酔った三日間だった。


    灯ともり人の囲みし枝垂れかな

    酔ひしれて花に染まれる宴かな

    散る花を頬に受けたり酔ひ心地










 
附・予算三万円で組んだ旅行計画の実施概要
   交通費    
     夜行バス  
     こだま  
     一日乗車券  
       地下鉄   
       市営バス  

5,000円
9,800円

 600円
 500円
宿泊費
 二泊朝食付き
       8,174円

食事
  昼食3+夕食2
       6,200円
この他、拝観料・
飲み物代がかかりました
又お土産も別会計です